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トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

2016-02-09 10:35:34 トーゴ : ロメ

ハロー


苦労して入国したガーナをたったの一週間で去るのはもったいない気もするが、そうも言っていられない。
時はすでに11月に突入している。
12月末に予約してしまった南アフリカ発の飛行機を無駄にしないためには、ゆっくりしたい気持ちを無視し、否が応でもペースを上げなければならない。
足早に旅路を垂れ流すのは自分のスタイルではないが、最も優先すべきは目標の完遂であり、西アフリカを南アまで陸路でつなげるとい夢物語を現実のものにするにはそれなりの犠牲が必要だ。

アクラから目指すは隣国トーゴの首都、ロメ。
ロメはガーナとトーゴの国境を越えた目の前に広がる都市である。
アクラからトーゴまでは地図上で見ると大した距離ではない。
ギニア湾沿いに並ぶ、ガーナ、トーゴ、ベナン、ナイジェリアは、両側からぎゅっと潰したような幅の狭さであり、ガーナのアクラとナイジェリアのラゴスを4カ国にまたがって結ぶ国際バスがあるほどだ。
きっと大変な移動になることはないだろう。

この予想がことごとく裏切られてきた西アフリカで、アクラ〜ロメ間の移動は何事もなく終わるのだろうか。


■ガーナのアクラからトーゴのロメまでの移動

3日間泊めてもらった藤田さんの家(豪邸)を出発し、タクシーを捕まえた。


俺「STCバスターミナルまでお願い。20セディ?15だ。じゃなきゃ降りるから止まれ。」


この時の俺は、ロメまで行くバスがどこから出ているのか全く分かっていない。
地図上で見たSTC Bus Terminalが大きそう、そして何度か名前を見たことがあるバス会社名というそれだけの理由で、このバスターミナルに行けばロメ行きのバスがあるだろうというなんの根拠もない推測からSTCバスターミナルに向かったのだ。
こういう時に旅人の嗅覚が試されるのだろう。

バスターミナルに向かう途中に何やら見たことがある建物が姿を現した。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

これ、、イスタンブールのブルーモスクじゃないの?


たまたま似たにしては似すぎているその姿に、どこかの国がしそうなパクリ疑惑を払拭できないまま、そんなことを気にも止めずタクシーはその横を平然と通り過ぎる。

大都会のアクラとはいえども、中心地を外れるとまだ舗装されていない道が広がり、整備が行き届いていない道路には進む道を失った車があふれかえり、クラクションが絶えず鳴り響いている。
その隙間を縫うように徘徊する物売りがさらに車の流れを妨げているから負の連鎖である。進まない車は物売りの格好のターゲットだ。

距離の割には長い時間乗っていたタクシーがやっとSTCバスターミナルに到着するが、その人の少なさに嫌な予感を覚えた。
車を降りると同時にその予感は現実のものになるのだが。

男「どこにいくんだ」
俺「ロメ。トーゴのロメ。」
男「あーあー、ロメ?!ロメまでのバスはここから出ていないぞ!」

基本的に嫌なことは最後の最後まで信じない俺は、チケットカウンターに並び、窓口のおばちゃんの口からロメまでのバスが出ていないことを聞き、やっと別のバスターミナルに向かわなければいけないことを悟る。
俺の嗅覚はそこまで鋭くはないらしい。


最初にここからはロメ行きのバスが出ていないことを教えてくれた男に、さっきは信じなかったことをわずかに申し訳ないと思いながら、ロメまではどこからバスが出ているかを聞いた。

男「ロメに行くには、Tudu(トゥードゥー)に行け。ちょっと待ってろ今タクシーを捕まえてやる。」

あれよあれよと言う間にやってきたタクシーに乗せられた。
値段を聞くと10セディ。距離感もあまりわからないから交渉のしようがない。

連れて行かれた先は、狭い道に多くのひとが溢れかえるマーケットのような雑多な場所。
タクシーを降りるよりも前からドアの外には男が待ち構えていて、どこに行くのかを必死の形相で問いかけてくる。

ぼそりと「ロメ」とつぶやくと、男はさらに声を張って俺を乗り場まで連れて行こうとする。
厄介なのは勝手にトランクから荷物を取り出し持って行こうとすることだ。
人によるのかもしれないが、俺はこういう客引きに荷物を触られたくない。本当は、バスに荷物を積み込む時も、積み込み男に手渡さず自分で積み込みたいくらいだ。
それくらいに荷物の扱いが酷い奴が多い。いずれは奴らに荷物、というかバックパックを壊されると思っている。そこまでヤワな作りではないだろうけど。


俺「勝手に荷物触るな!」
男「俺が荷物を持って案内してやらないとお前はどこでバスに乗るかもわからないんだぞ!ああ一人で行きたいなら一人で行け!」


ああへそ曲げちゃったよ。
しかしここまで来れば、どこにバスが停まっているかなど道行く人に聞けばすぐにわかる。

無事に見つけたロメ行きのバスは、定員10人少しの乗り合いのバン。値段は19セディor21セディ。
19セディは後部座席後ろ二列4人掛け、21セディは後部座席最前列3人掛け。2セディ(60円)の差でどう見ても最前列の方が何倍も快適そうだったので、21セディ払った。
というわけで、アクラからトーゴのロメに行くにはトゥードゥー(Tudu)に行くべし。


アクラ(Tudu)→ロメ 21セディ (乗り合いバン・荷物代は取られない)


車に絶えずに寄ってくる物売りから弁当を3セディで購入し、出発前のランチ。
米の上にチキンが乗ったシンプルなものだけど、めちゃくちゃうまい!おそらくガーナ最後の料理を美味しさで締めることができてよかった。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

さて、乗客は順調に集まり、待ち始めてから1時間もしない13時過ぎ、アクラを出発した。
21セディ席を選んだのは大正解だったようで、後ろの席はかなりぎゅうぎゅうで狭そうだ。

ただし、3人掛けの真ん中に座っていたのだけど、両側のおばさんがお互いに全力で会話をするものだから、両側から大声が聞こえてきて、うーん、なんと言えばいいのだろう。うるさい。やかましい。
さらに悪いことに、両者とも立派なクチャラーである。というかアフリカンは基本的にクチャラーだ。
それ自体はもう慣れてしまった部分もあるのだけど、問題なのはクチャラーが大声で、しかも両側で会話をするものだから、真ん中にいる俺は口から度々飛んでくる食べカスに晒されることになる。勘弁してくれ。

のどかな田園風景に伸びた幹線道路を日本の高速道路並みのスピードで飛ばし続ける車。

オフラインの地図を見ながら、周りに見える川や橋などを目印に現在地を割り出そうとする。
アクラから国境までの直線距離がそれほど遠くはなく感じていたので、走り出してからの時間で大体この辺りかなという実感はすでにトーゴの国境付近に来ているはずだったのに、周りの地形を見る限りまだ半分しか着ていないことに気づき落胆した。

ドライバーや他の乗客は、なぜか物売りたちに高圧的な態度を取り続けている。それを見るのはとても不快だった。
フランス語を話すおそらくトーゴ人であろう彼らに、これから行くトーゴの印象を汚されまいと抗う。

せいぜい2〜3時間で着くだろうと思っていた道程は、結局5時間半の末、ガーナ側国境に到着。そしてロメまで行くと言われていた車はここで運行を終えることを告げられた。
とは言っても、国境を越えればそこはもうロメ。
首都が国境の町になっている国は初めてだ。

車を降りて、徒歩で国境に向かう。
途中両替屋にレートを交渉するものの、どこの両替屋も一定のレートでやっているようで交渉の余地はなかったので、言われた通りの値段でガーナセディをCFAに替える。
一週間ぶりのセーファーフラン。なんとなく安心感を覚えるのはなぜだろう。


■トーゴ国境で入国拒否

国境というのは人の行き来が盛んな分、活気にあふれ独特の雰囲気を醸し出す。
旅をしてきた場所に別れを告げ、新しい空気に出会う瞬間。
その瞬間は旅をしている中で、最も旅情を感じ、最も緊張し、最も興奮し、最も快感を覚える瞬間の一つである。


そして、最もトラブルが起きやすい瞬間でもある。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

西アフリカは警察や役人の腐敗がひどいということを度々目にするが、正直アフリカに入ってからここまで、それほど腐った奴を見てこなかった。
西アフリカの中でも特に腐っていると言われているのが、ナイジェリア。中でもベナンとナイジェリアの国境は賄賂請求の嵐が吹き荒れるほどのひどさらしい。
ここから、トーゴ、ベナン、ナイジェリアの順で国は続くが、ベニン〜ナイジェリア間でそこまで急に腐るのだろうか?
もしかしたらここら辺から徐々に腐るのかもしれない。トーゴという国に対しての評判がわからないからには、この国境でさえ油断はできない。

大きく息を吐き、かすかな緊張を表に出さないように、まずはガーナの出国手続きをする。
イミグレーションカードを記入し、笑顔の一切ないガタイのいい女職員に手渡すと、イライラした様子で「全部大文字で書けってここに書いてあるでしょ?住所も職業も目的地も全部大文字。もう一度全部書き直して。」と。
面倒くさそうな顔をすると、「出国しなくなかったら書かなくていいのよ」と言葉を続ける。

これくらいのことなんでもない。書き直せば万事解決だ。大文字で書かなかった俺が悪いんだ。
そう自分に言い聞かせもう一度白紙のイミグレーションカードを埋め始めた。


特に大した問題も発生せず、ガーナの出国を完了。

さて、次はトーゴの入国だ。

人の流れに乗り、トーゴ側のイミグレーションに向かう。

「ヘイシヌア!(へい中国人!)」
と真っ先に声をかけてきた男に招かれるがままにイミグレと思しき小さな小屋に入った。


俺の国籍の第一候補に中国が上がってくるの相変わらずだが、ここら辺から第二候補、人によっては「中国」よりも先にベトナム人?と聞かれるようになる。
たぶん、細い体に焼けた肌、伸びたヒゲと髪、ここらへんの要素からだろうか。
ちなみにもしかしたら第二候補はこっちかも…と思うくらいに、アメリカ人?とも聞かれる。
おそらく英語を話すというただそれだけの理由で。単純か。



イミグレで紙を渡され記入しろと言われる。
今のところ男は軽いノリで接してきているからきっとこのまま問題なく通過できるはずだ。


男「トーゴのビザは?」

俺「ああ、あるよ。ブルキナで取った西アフリカ五カ国共通ビザ。」





男「は?」




五カ国共通ビザ?なんだそれ?とばかりに解せない顔つきで俺のパスポートを受け取りペラペラとページをめくる。
渡された紙に記入するのを忘れ、不穏な空気が流れる中じっと男の顔を見ていた。
男の眉によったシワはなかなか消えない。











「ダメだ。このビザでは入国できない。お前はここで10,000CFA(約2000円)で新しくビザを取り直す必要がある。」



は?なぜ?!



予想していなかった角度からの言葉に声を荒げた。


男「いいか?お前はこのビザをブルキナのワガドゥグで取った。そしてこのビザは、ブルキナ・トーゴ・ベニン・ニジェール・コートジボワールで有効だ。でもお前は一度それ以外の国ガーナに出ている。だからこのビザはもう無効だ。」

俺「ちょっと待って。俺はブルキナにはブルキナ単体のビザを取得して入った。そこで取ったこの5カ国共通ビザはまだ使用していない。未使用の状態だ。もちろんこのビザが各国シングルエントリー(一回しか入国できない)のは知ってる。でもまだ未使用なんだからお前の言ってることはおかしい。何より俺は俺と同じルートで同じビザで入国した人を知ってる。」

つまり論点は、この5カ国共通ビザを取得した時点でこのビザがバリデートされたかどうか。
発行された時点で使用開始になっていたら男の言う通り、一回ガーナに出ている俺はもう5カ国どこにも入国できない。
しかし、新規発行したビザは国境でスタンプを押され始めて使用開始になるものだろう。普通は。
しかも発行したその時、俺は単独で取得したブルキナのビザでブルキナにいる。5カ国共通ビザが有効になる必要はない。

猛反論する俺に、男は自分じゃ判断しかねるからボスを呼ぶと言って、身分が高いであろう男を呼び寄せた。
男はボスに成り行きを説明し、俺のビザを見せる。
俺はその様子を威嚇するように見続けた。
隙を見せたらたかられる。警戒心に満ちた俺には、周りに見える全ての役人が敵に見えていた。

フランス語で会話する役人達。
そうだ、ここはもうトーゴだ。英語を話すガーナは終りだ。
フランス語がわからないながらも、ボスは部下の男の言うことに激しく頷いている。
嫌な予感を拭えないまま、ボスが口を開いた。

ボ「このビザはダメた。お前はこのビザをブルキナのワガドゥグで取った。そしてこのビz(以下同」
俺「だからさっきも言ったけど、ブルキナにはブルキナのビz(以下同」
ボ「それはわかってる。でもこれは決まりだ。お前はワガドゥグでこれを発行したその後直接トーゴにこなければいけなかったんだ。」
俺「でもガーナを通ってこのビザでトーゴに入国した人を知ってるぞ。(実際にネットでそういうルートを辿った人の記事を見たことがある)」
ボ「その人の名前は?何月何日ここを通った?言ってみろ?」
俺「そんなこと詳しく知るか。そっちもルールっていうならそのルールが書かれたドキュメントを見せてみろよ!」

ぎゃーぎゃーとしばらく言い争った。が、どちらも引かない。
5000円を払って取ったビザが使えない、そしてここでさらに2000円払ってビザを取りなおさなきゃいけない、そんなの絶対に嫌だ。
こいつらは俺にここでビザを取らせたいだけだ、そうに違いない。
そう思ってしまうくらいに完全に頭に血が上り、役人が敵に見えていた俺はボスに向かって呟いた。









俺「お前らはどうせ金が欲しいだけだろ」








この言葉が全ての始まりだった。
言葉を荒げながらも、表情には笑顔を交えながら話していたボスの顔が急激に変わった。
本当に、漫画のように、急に顔からスッと笑顔が消え、顔がこわばり、俺が持っていたイミグレの記入用紙を取り上げ、パスポートを俺に突き返し、出口を指さしながら俺にこう言った。

ボ「"Please" go back that way and go back to your country. Thank you. Bye.(来た道戻って自国に帰って"ください"。)」
俺「は、何を言ってんの?」
ボ「お前はトーゴには入国できない。なぜならお前にはビザを発行しないからだ。出口はあっちだ。さようなら。」


俺の一言が彼の逆鱗に触れたらしい。


俺「NO。俺はトーゴに行く。」
ボ「ははははは!どうやって?誰がお前にビザを発行するんだ?ここのボスはこの俺だ。はやくここから出て行け!」


もはや、俺が持っているビザが使えるかどうか以前の問題になってしまった。
ボスは建物から出て行き、ドアの前で他の男達、おそらく両替商とかタクシー運転手とか、明らかに役人ではない男達と話し始めた。
俺に聞こえるような大声で「あの日本人だか中国人だかがさー!あっはっはっは!!!!」と馬鹿笑いを飛ばす。
話し相手の男達もニヤニヤしながらこちらを見ている。


俺は起こっていることが把握できないままそこに立ち尽くした。
待って、ビザは?え、これどうなるの?ビザ使えないし、出してもくれないの?俺、どうすればいいの?


トーゴ側からガーナに向かう役人らしき人がイミグレの小屋に入ってきた。
ボンジュールと紳士的な様子で声をかけてきたことから、この人たちはボスよりも偉い国境役人で、この騒ぎを駆けつけて来たんじゃないか、そして騒ぎを収めに来たんじゃないか。そんな妄想が頭を駆け巡るくらいにこの時は藁をもつかむ気持ちだった。
そうするとボスがとてつもない笑顔でこの人たちに話しかけ始めた。
単語単語を拾う限り、俺のことを話していることがわかった。
俺の目の前で、俺に聞こえるように、俺の方をチラチラと見ながらニヤニヤした笑みを浮かべながら話している。
紳士達はそのまま俺に何をするわけでもなく、ガーナ側に去った。















ふざけるなよ。

ふざけんな。

怒りがこみ上げてくる。



俺「おい!ビザを出せ!」


大声でボスに叫んでも無視。




ことの深刻さに気づき始めた。
ちょっと待て。俺、トーゴに入れないの?
俺のアフリカの旅はここで終わるの?


目の前のデスクに座っていた女と男(部下男とは別の男)に、「エクスキューズミー。ビザを発行してくれ。プリーズ。」とお願いしても無視。
俺がそこに存在していないかのような、彼らには俺が見えていないかのような、そんな感覚だった。


屈辱だった。
入国拒否された挙句、見世物にされ、関係のない奴にまで笑い飛ばされ、話しかけても無視。



こいつらが俺の旅を終わらせるのか?
こんな馬鹿なことでアフリカの旅が終わってしまうのか?

ふざけんなよ。。くそっ。
くそっ。

どんなに自分が正しいと思っていても、ここでは奴らがルールだ。
奴らがyesといえばyesだし、noといえばno。
奴らにとって、俺はどうにでもできる小さな存在だ。
どんなに納得がいかなくても、どんなに理不尽でも、従わなければいけない時があるんだ。
悔しくて涙が出てきそうだった。

ここは全プライドを捨てて頼み込むしかない。
旅の完遂に比べたら俺のプライドなんてクソみたいなものだ。


なりふり構わず、無視されても「お願いだからビザを発行してくれ、プリーズ。」と頼み続けた。
部下男が、「まだいたのか!お前はトーゴを侮辱したんだ。トーゴには入れさせない。出口はあっちだ。出て行け!」と大声で叫んできても、「お願いだ。お願いだから。」と頼み続けた。
部下男はボスが悪く言われたことに相当腹を立てているらしい。ボスは依然として外でとびっきりの笑顔で男達と会話をしている。

デスクに座っていた女に小声で、「ねえお願い…ビザを発給してくれない?」と頼んだ。
女は「ボスに言わなきゃだめよ」と返してきたが、「だってあいつはあんなんだもん。聞く耳持ってないよ。」と俺が言うと、「はあ…ちょっと待ってて。私が頼んであげるから。」と。
初めて俺の話を聞いてくれたというだけでなく、ボスに頼んでくれるという彼女の優しさには心が震えた。

仕事をするわけでもなく、ただベラベラと喋り続けるボスが小屋に入ってきたタイミングで、女がボスにフランス語で何やら話しかけてくれた。
おそらく、「もういいんじゃないですか?ビザ発給してあげても。」とかそんな内容だと思う。
それに対しボスは、「こいつは俺を、トーゴ全体を侮辱したんだ。ビザは出さない。」

俺「侮辱なんかしていない!そのことは謝るからビザを出してくれ、頼む。」
ボ「今更謝るって?お前はもう自分の国に帰るんだ、はやく出て行け。」

俺「ビザが出るまでここ動かないからな!!」


再びボスはとこかへ行った。


そもそもすでに出国したガーナに戻ることなんてできない。
し、唯一の味方であるデスク女に小声で聞いたところ、このイミグレは24時間体制らしい。24時間あのボスが一人で担当するとは思えない。そしたら何時間でもここにいて、ボスと別のやつが交代するタイミングで入国してやる。ただボスが「あいつにはビザを出すな」と伝言したら終わりだけど…
こうなったら根比べだ。



問題なくイミグレでスタンプを押されトーゴに入国していく人たちの横で俺は立ち尽くした。
言葉を発することも止め、ただそこに立ち、時が来るのを待った。


入国拒否されてからしばらく、たぶん1時間半くらい経っていたと思う。
相変わらず部下男は、はやく出て行け、はやく帰れ、とガーナ側を指さしながら叫んでくるが、「俺は出て行かない。ビザが出るまでここを動かない。」と頑なに動こうとしなかった。
すると、デスクに座っていた男が、

男「さっき渡したイミグレの紙は?」
俺「あんたのボスに取り上げられたよ。」

そして外を指さし、「アタン(フランス語で「待ってろ」)」と言ってきた。


内心、「勝った」と思った。


しばらく待っていると、イミグレの用紙に記入させられ、パスポートを渡すように指示された。
無言のまま戻ってきたボスがその紙と俺のパスポートにサインをし、無言のまま去った。
俺はデスク女にのみ「メルシ」とお礼を言い、小屋の外に出た。

こうして俺は苦闘の末にトーゴビザを入手し、トーゴに入国することができたのである。



おそらく、今までに体験した国境越えの中で最も体力を使った越境だったと思う。

何が本当かはわからない。
本当にそういう決まりがあって、ネットで見た過去に入国に成功している人はたまたまラッキーなだけだったのかもしれない。


西アフリカ5カ国共通ビザを使う人はこういうことが起きる可能性があるので要注意です。


■西アフリカの楽園トーゴに佇むブードゥーマーケット(呪術具マーケット)

疲弊していたのはメンタルだけだと思っていたが、イミグレで立ち尽くしている間ずっと前後に背負っていたバックパックのせいで肉体的にも疲労しているみたいだ。
気が立っているのもあり、声をかけてくるタクシーの運転手をことごとく無視し、目星をつけていた宿に足早に向かう。
国境を一本跨いだだけで、100m後ろで話されていた言語は姿を消し、少し前までは馴染みのなかった、けれど今は親しみを覚える言語が飛び交っている。
久しぶりでちゃんと伝わるかなという緊張とともに宿までの道を尋ねた通行人から返ってくるのはもちろんフランス語。
全ては理解できない俺に一生懸命に伝えようとしてくれる姿に、この国の人々の人の良さが滲み出ている。
はやくロメの街を感じたい。

前述の通り、国境を越えた瞬間そこは首都のロメ。
国境から30分ほど歩いた場所にある宿は難なく見つかった。
薄暗く、舗装もされてないサラサラの砂が積もった道が広がる一角には似つかわしくないなんともオシャレでキレイな宿だ。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

一階部分はレストランになっていて、バーカウンターにいた西洋人のスタッフにチェックインを頼んだ。
どうやらフランス人によって経営されている宿みたいだ。
正確にはフランス人かどうかは知らないが、フランス語を話す西洋人によって。
それでもこの宿のスタッフは高い割合で英語を話すことができた。欧米人オーナーの宿というのは教育が行き届いているところが多い。

Le Galion 7000CFA (シングル・wifiあり・部屋の中に水シャワー)

処理待ちをしている間にレストラン部分を見回していたが、客層のほとんどが欧米人。
みんなが楽しそうに談笑しながら、バーカウンターに入っているトーゴ人のスタッフがにこやかに酒をサーブする。
とても和やかな空気が流れる居心地のいい空間だ。アフリカではあまり味わったことのない感覚でもある。

部屋に案内してもらった。古い建物ながらも、オシャレに整えられた部屋は、最初こそあまり好きにはなれなかったがこのあと数日滞在する中でどんどんと居心地が良くなっていくスルメのような部屋だった。

周りのレストランを探しに行く元気もなかったので、この日は宿のレストランで食べることにした。
カルボナーラにビール。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

高い、高すぎる。合わせて1000円近くいっていた気がする。
しかしこんな贅沢でもしないとやってられない。それぐらいにはやさぐれていた。
パンに何気なく添えられたマスタードさえもうまい。
そしてカルボナーラの皿とは別の皿で出てきた卵黄をかけてパスタに絡めて食べると、それはもうこんなお上品な味いつ以来だろうと回想に耽ってしまうほどの美味さだった。
さすがはフランス人。
国境を越えて変わったのは言語だけではないようだ。



この日はシャワーも浴びずにバタンキュー。(死語)


翌日、外は気持ち良く晴れ、真っ青な空から燦々と太陽が照りつける中外に出た。
夜は暗くて見えなかったが、未舗装の道は予想以上にサラサラの砂で覆われていた。まるでビーチの砂のような。
ここロメは海沿いに広がる街。宿を出て5分も歩けば海岸線に出る。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

アフリカに入ってからの国では見たことがないような南国の装いだ。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

南国らしいゆるさの中を、海沿いに歩きながら道路に手を振った。
バイクタクシー通称バイタクを捕まえるためだ。
ロメのバイタクはとても安い。10km近く乗っても、交渉次第で100円ほどで移動できる。

2〜3kmだったら40,50円だ。

タクシーを拾いまず向かった先は、”Commissariat Central de la Ville de Lome”という役所。
なぜ大使館でもないお役所に?
ロメの居住証明書を取得するためだ。

え、ロメに住むんですか?

これについてはこの次の記事で詳しく書くことにする。


この役所での手続きを済ませ、その足でロメで最も行きたかった場所、というか、西アフリカに来たいと思うきっかけとなった場所に足を運んだ。

その名も、Fetish Market、又の名をVoodoo Market
Voodoo(ブードゥー)とは、隣国ベナン発祥の原始宗教であるブードゥー教のこと。
呪物を用いながら呪術を扱うこの宗教は、なんといってもその呪具のインパクトがとてつもない。
使用されるのは動物の生首やミイラ、骨などであるが、それを専門に売るマーケットがここトーゴのロメにあるのだ。
地図にも丁寧に”Marche des Feticheurs”(Fetich market)という表記がある。

おそらく俺の全く知らない世界だ。この好奇心を押さえる術は持っていない。


”Commissariat Central de la Ville de Lome”の役所からバイタクを捕まえ、500CFA(100円)でマーケットに向かった。

降ろされた場所は、予想とは懸け離れたこじんまりとした駐車場のような場所で、これは本当に俺が来ようと思っていたブードゥーマーケットなのだろうかと不安になってしまう。
それでも、柵の向こうに見える陳列物は、遠くからでもわかるおどろおどろしさを放っている。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

敷地に足を踏み入れると、入り口のすぐ横に受付のようなスペースがある。
そう、、、なんとここ、金を取りやがるのだ!
入場料(ガイド料)が3000CFA
カメラ持ち込みが2000CFA
合わせて5000CFA(1000円)

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

なんと阿漕な商売かとは思いつつ、観光資源が乏しいトーゴの目玉といってもいいかもしれないこのマーケットに払う金は惜しむべきではない。
すっかり観光地化されているマーケットではあるものの、観光客と思しき人間は自分以外に皆無だ。


5000CFAを払い、ガイドと称する英語が堪能な男の案内が始まった。


呪具の並べられた棚に近づいた瞬間に走る衝撃。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

※ここから先微グロ注意





トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

棚にぎっしりと敷き詰められているのは、犬、鳥、蛇、亀、牛のなどのミイラや生首。


トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

こちらはネズミやハリセンボン、カエル、カメレオン。



トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

猿の生首や、コウモリのミイラも沢山ある。


言っていることが聞き取れなくてこれは曖昧なのだけど、この動物たちの呪具は、ミイラは粉末にして薬として飲む(?!)らしい。
そうすると体を守ってくれるのだとか。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

そしてここに並べられているものは全て自分たちで殺したものではなく、自然に死んだ動物の肢体を集めてきて、処理を施しこういう状態にしているのだそうだ。
自らの信仰のために動物を生贄にしてこういう姿にしていると思っていた俺にとってはこの事実は意外であった。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメトーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

また、このマーケットにいるのはトーゴ人ではなく、このガイドも含め全てベナン人である。
唯一の観光客である俺に、店の主たちは適当な対応、もしくは完全なる不対応を決め込んでいた(それは俺にとって好都合だった)が、たまにバイタクで乗り付ける”本当の”客、つまり呪具を買い求めに来る人が現れる度に顔色を急変させ、まだバイクから降りてすらいない客に対し猿の生首をこれでもかと近づける様を見て、このマーケットはただの観光地ではなく、本来の目的のためにきちんと機能しているブードゥーマーケットなのだということを実感する。

いいよいいよと言っているのに、ガイドに無理やり勧められるがままに何かの骨でできた首飾りをつけさせられ、写真を撮られた。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ
ガイドはさらに解説を続けた。

途中、「中には嫌だという人もいるから一応聞くけど、ブードゥーの儀式を受けたいか?」と言われ、敷地の一角にある怪しげな小屋に連れ込まれた。
断る理由はない。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ
中では、動物系ではない呪具が何種類か用意され、それぞれの効果を説明されたのちに、どれかを選べばそこにいるシャーマンに祈祷してもらい呪具にパワーを封じ込められる、という、言ってしまえばお土産販売が行われた。
何も買わなかったものの、その説明は興味深く、旅の安全、記憶力アップ、好きな相手を振り向かせる、精力アップ、家の守り神etc、それぞれの呪具の使用方法と効果を解説してもらった。

ガイドの話を聞いていると、このブードゥー教というのは、呪術を扱うことや呪具の見た目からドロドロとした黒いイメージを持たれがちではあるけれど、誰かを呪い殺すだとか、そういう呪いではなく、悪や魔に対する呪い、つまり悪い力に抗うための力を信仰する宗教なのだと思う。

実際ブードゥー教は、白い宗教(ホワイト◯◯)と呼ばれているらしい。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

いろいろなことを説明してくれたガイド、きっと最後にチップを要求されるのだろうなと思っていたのに、「それじゃあ説明はこれで終わり。まだ写真を撮りたかったら自由に回っていいから。何かあったら俺はあっちに座っているから声をかけてね。じゃあ。」となんとも後味のいい対応で締めてくれた。
まあすでに3000CFA払っているのだけど。
それでもここで見れたこと、知れたことは、ここに払った金以上の価値があると思っている。

こんな世界が存在していたなんて。
この地球上には想像もしない世界がまだまだ隠れているに違いない。
その姿を一端でも覗き見ることができた時、旅はまた一つその意味を確かなものにする。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ


ゆっくり回っても1時間そこらで全てを見切れてしまうブードゥーマーケットを後にした。
見終えたのは昼過ぎだったが、役所に戻って来いと言われた時間までまだしばらくある。
まだロメの街をバイタクでしか移動していなかったので、役所までの距離はだいぶあったものの、歩いてみることにした。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

容赦なく照りつける太陽の下に舞う砂埃は他のアフリカ諸国と変わらないが、それでもこの場所に流れる空気がこんなに穏やかなのは、ロメの持つ独特の南国感によるものが大きいだろう。
交通量が多く、背の高い建物も多く立ち並ぶ都会ではあるが、大通りを一本逸れれば、まだまだ田舎的で庶民的な素朴さが残る土道が伸びている。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメトーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

生活レベルは決して高そうには見えないものの、ロメに暮らす人々からは余裕が垣間見える。
金銭的や物質的な余裕ではなく、人間的な余裕だ。
街を歩いていて嫌な思いをすることがない。トーゴ人には嫌味がないのだ。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

強い日差しの中汗を垂らしながらも、周りのゆるい空気を全身で感じながら歩き続けた。
時には立ち止まり道端にいる人とお喋りをし、路上に並ぶカラフルな布に目を奪われ店の人と値段交渉をしたり、乾いた喉をコーラで冷やしたり、どこの街にいても変わらないこんな行為一つ一つが気持ちいい。

2時間ほど歩き、役所で無事に居住証明書を取得。これがとても重要なアイテムになる。
そのまま徒歩で帰路についた。


街の中心部、道が舗装されたエリアに入っても、トーゴ人の心地よさは変わらない。
他の場所との違いを問われればうまく説明することはできないが、気持ちよく道を歩くことがほとんどなかったアフリカでしばらく感じることのなかった心地よさだ。
この場所に自分がいることに違和感を感じないこと。
嫌味や排他感がないだけでなく、好意すらも感じることのできる彼らににじみ出る人の良さというのはこの街を楽園にしている大きな要素だろう。
トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

この日はいろいろなことがうまくかみ合い、やりたいと思っていたことが全て達成できた日だった。こういう日は滅多にない。
タスクをうまく消化できた達成感が、南国のゆっくりとした空気に混じり、じんわりと体に染み渡る。



街の向こうに沈む夕日が今日という日をゆっくりと終わらせていく。
この街には、きっと明日も今日と変わらない気持ちのよい時間が流れるのだろう。

トーゴ国境で入国拒否!ブードゥーマーケットが佇む西アフリカの楽園、ロメ

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2015/12/12

西アフリカの大都会、贅沢な時間を過ごしたガーナの首都アクラでの出会い。

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2016/02/11

南米最高峰アコンカグア挑戦記 〜準備編〜

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さとし

楽しく拝見させてもらいました。一点質問があります。トーゴの後、ベニンで5カ国共通ビザは使えましたか?

返信 REPLY

2016-03-14 19:20:42

Kei

さとしさん、こめんとありがとうございます!
更新がものすごい遅くてまだ書けてはいませんが、このあと入るベニンでは5カ国共通ビザ使えました。
ただ、たぶん本当は使えないですし、よく見られたらバレるので、ドキドキでしたが笑
ベニンはアライバルで取れるビザが48時間(だったかな?)なので、ビザ使えたのは大きかったです!

返信 REPLY

2016-03-22 06:38:47


YOSHIRO

西アフリカ5ヶ国ビザについて調べている中で拝見しました。
他の方から頂いているコメントの中でベナンの48時間のアライバルビザについてお話しされていましたが、トーゴからの国境で取得可能だったということでしょうか?
料金等もしご存知でしたらお伺い出来ればと思います。

返信 REPLY

2016-10-20 11:53:18

KEI

YOSHIROさん、コメントありがとうございます!そしてとんでもなく返信が遅くなってしまい申しわけありません。
結局ベナンで5カ国共通ビザがしれっと使えたので、ベナンのアライバルビザについては調べるだけにとどまり、実際に購入していないので何とも言えないのです。
現在の情報はわかりかねますが、当時はトーゴからの国境で取得可能だったようです。料金もうる覚えですが馬鹿高くはなかったように記憶しています。(数千円程度)
が、西アフリカのビザ事情はとても流動的なので、最近行った方のブログを探された方がいいかもしれません。
お役に立てず申し訳ないです。

返信 REPLY

2016-12-12 20:23:48


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